東芝不正会計事件ですが、パソコン事業の有償支給品を使った利益創出、いわゆるバイセル取引についてはなぜ売ってもいない支給品処理に利益が計上できるのかがわかりにくくなっています。しかも、なぜこの処理が東芝社内でまかり通っていたのかや監査法人が見抜けなかったのかもよくわかりません。そこで東芝が行った有償支給在庫を使って利益を出す仕組みを解説します。これは会計知識がないとすこしわかりにくいかもしれません。

通常の製品在庫には労務費などの固定製造原価配賦分が含まれていますので、期末に製品在庫が増えると製品売上分に配賦する分の固定製造原価は減ります。その結果、期末製品在庫額が増えると利益が増えるという現象が起きます。これは通常の財務会計処理で認められた処理です。(ただし故意に製品在庫額を増やしたり、虚偽の在庫を作る行為は明らかな粉飾会計となります)

東芝は部品購入価格に上乗せした金額分(報告書ではマスキング額と呼んでいます)を支給部品の製造原価に計上しました。そのため、期末支給品在庫(会計上は未収入金扱い)が増えるとマスキング部分の費用が売上分の配賦製造原価を減らすことになり、結果的に利益がでてくるという仕組みです。すなわちマスキング額を増やして部品をODM先に押し込めばその分いくらでも利益を増やせるということになります。 しかしこの部品価格の上乗せ費用には製造活動はからんでいませんので、マスキング費用を製造原価にすることには無理があり、本来は認められません。ここでなぜマスキング額を製造原価として計上していいと新日本監査法人がOKしたのかは謎で、委員会の人もはかりかねています。ちなみにマスキング部分の費用は生産委託先から買い戻す際に相殺されますので、自由に上乗せしても委託先は高く買わされたというような文句はでてきません。東芝では最終的に部品価格の5倍という異常なマスキングになっていたそうです。   この処理は監査法人が長年にわたって了解?してきた処理ですので、歴代の社長が会計上問題ないと思っていたとしても不思議ではなく、調子に乗って利益上乗せにこの仕組みを使ったようです。報告書では他の事業の不正会計と違って歴代社長がこの仕組みを使って直接利益創出指示する姿がたくさん出てきます。佐々木氏も田中氏も適正だと思っていたと証言していますが、日本の多くの大企業経営者は会計の勉強をしていませんので、本当に適正だと思っていたかもしれません?もし適正だと思っていたのであれば生産委託会社への支給部品の価格を上乗せするだけでそれがそのまま利益になるということですので、会計を知らない経営者ほど喜んで期末決算対策に使うでしょう。同じ価格で買い戻すので委託先にも迷惑がかかりませんし、打出の小槌気分で乱発したのもうなづけます。

もしも経営者や監査法人が製造原価計上自体がおかしいことをわかっていて実施していたとなるとかなり悪質な詐欺行為です。

 ★「東洋経済オンライン」に半導体事業の不正会計に関する解説記事を書きました(27.09.20)。こちらの方が手口的には巧妙かつ悪質です

  http://toyokeizai.net/articles/-/84683