政府による統計不正、大企業による検査不正。相次ぐ不正事件が世間を騒がせています。こうした不正報道を見ていて疑問に思うのは、なぜ日本社会は事後の検証作業を軽視するのかです。これは私が社会人になってからずっと抱き続けてきた疑問です。
たとえば不正とはいわないまでも、企業社会でも売上や利益といった業務結果だけを表面的に評価して予算を作成しているだけのところが多く、結果数字の発生原因分析まで踏み込んで行っている会社は限られます。事業活動が終わってから結果を分析・検証しても後の祭りという考え方もありますが、それでは組織は進歩していきません。
多くのビジネスマンはPDSのS(See)やPDCAのC(Check)が重要だということを習ったはずです。また理科系出身者であれば、学生時の実験検証の重要性を叩き込まれてきたと思います。それにもかかわらず結果分析を実践している現場はなぜ少ないのでしょうか。
私のコンサルティングプロジェクトではおかしな数字が見られたら徹底的に原因を突っ込んでいきます。しかし、そうした結果数字への突っ込みに慣れていない企業関係者も多く、メンバから何でそんな質問をされるのだろうと驚かれることがよくあります。こうした検証作業のやり方や重要性をメンバに知ってもらうだけでも、私がコンサルティングに入る価値は十分にあると思っています。
企業以上にひどいのは政治の世界ではないでしょうか。政治の世界では予算委員会ばかりが注目されます。しかし、決算委員会が話題になることはありません。企業の株主総会と同様、決算審議こそが本来は重要です。しかも多数決ハンデを負っている野党は予算委員会よりも決算委員会での執拗な追及の方が存在意義を発揮できるはずです。たとえば突っ込みどころ満載の現政権にはいくらでも追及ネタはあると思います。閣僚の失言を国会で問題視するよりも、各種補助金や助成金の効果数字などを検証すべきではないかと思います。
ところで、上記のPDSとPDCAサイクルですが、PDS(Plan Do See)は経営マネジメントサイクル、PDCA(Plan Do Check Act)は品質マネジメントサイクルで両者は厳密には違います。両者を混同している人がいますが、こんなところにも検証軽視の流れが透けて見えるような気がします。PDCAは外部検証的な色彩が強く、本来は当事者検証問題であるPDSの方がより重要です。ところが、世の中的にはPDCAの方が一般的です。それが経営者の当事者意識を後退させているような気がしています。