生産管理コンサルタントの最大の役割は、生産管理知識の提供にあります。生産管理業務は他の業務に比べて理論的な話が多いのですが、一般の人が生産管理理論を総合的に学ぶ場は限られます。それを補うのが生産管理理論に精通したコンサルタントの存在です。生産管理理論を用いてクライアント企業が遭遇している課題を解決するための仮説を探ります。得られた仮説についてクライアント関係者と議論したり、試行適用したりを繰り返すことで課題解決にむけてプロジェクトを導いていきます。

このコンサルティングの進め方ではコンサルタントは生産管理理論に精通している必要があります。しかし日本のコンサルティングは現場改善支援が主体だったため、生産管理理論の知識をもっているコンサルタントが少ないのが難点です。ただしいくら知識があるからといって現場を知らずに流行用語を振り回すだけのコンサルタントでは意味がありません。

コンサルタントの次の役割がプロジェクト内もしくは企業内での潤滑剤の役割を担うことです。日本企業、とくに歴史古い重厚長大型産業の工場の場合は、縦割り組織体質が強く残っていることが多く、他部門のことには口出ししないとか、自部門の防衛に走りやすい傾向があります。この問題を打破するために外部コンサルタントを利用することもあります。

他にコンサルタントの過去の事例経験を流用するという活用もあります。多くの工場は自社は特別と思っている傾向がありますが、筆者の経験ではそんなに特殊な工場はほとんどありません。コンサルタントの他社での改善経験を自社の改善活動に活かすことができれば時間の節約が可能です。

生産管理コンサルティングの進め方

図は筆者が生産管理コンサルティングに入る際の手順を示したものです。最初に対象製品の生産方式(MTOだとかATOだとか)を確認します。あらかじめ会社のサイトなどで製品や取引先を確認することである程度想定しておいてから、工場を見せていただくことで整理していくようにします。このことで当該企業の生産管理上の重点管理ポイントをピックアップします。

次にコンサル先の皆さんが考えている現状課題をヒアリングします。ただし、この課題が真の課題であるかどうかはわかりません。あくまで参考情報としての課題確認です。

次に各製品の生産計画がどうやって立てられているのかを確認します。上記の生産方式に沿った計画が立てられているかを確認するとともに、生産管理の当事者として重視すべき部署を想定するために実施します。

次がリードタイム、在庫状況実態調査です。これには2章で紹介した資料を作ってもらいます。ここで数値的にも浮き彫りなったものが真の課題です。この時点でクライアントが気付いていない課題がたくさんでてくるのが普通です。

次にシステムの活用状況は現存するドキュメントとともにシステムの運用画面をみせてもらいながら業務フローを確認します。

こうしたステップを経たうえで、課題の原因仮説を作りPDCA的に改善の試行錯誤を繰り返しながらプロジェクトを遂行していきます。