上場企業が期中に発表する期末業績予想は当該企業の経営姿勢を判断する重要な情報です。比較的固い業績予想を出す企業もいますし、到底達成できそうもない業績予想を出す企業もいます。私が過去に遭遇したケースでは、製品のリードタイム3か月以上かかる製品のメーカなのに第三四半期時点の売上額と受注残額を加えた額以上の期末業績予想を出していた企業がありました。この企業はその後業績予想の下方修正を繰り返しました。

最近の新聞報道をみていますと今期末の上場メーカの業績予想は売上数量増を反映した予想をだす企業が多いようです。その裏付けとしてすでに大量の注文や内示をもらっていると説明する企業もいます。公表数字は単なる予測数字ではなく、固い数字だというわけです。非常に喜ばしい状況といいたいところです、この予想数字を信用しても大丈夫でしょうか。

ポイントは半導体などの電子部品の世界的な不足です。今までの売上予測数字はどのくらい売れるかという営業予測を前提に作られるのが一般的でした。今期はそれだけでは十分な予測数字とは言えません。どれだけ売れるか以上にどれだけ作れるかといった予測も加味する必要があります。工場の現場を歩くと部品さえそろえば作れるのにという話を聞く機会が増えていますが、作りたくても作れない状況に追い込まれているメーカが増えています。今までの企業常識では想定外ともいえる事態が起きています。

それならば無理な目標数字を業績予測数字として発表するのではなく、実際に工場が作れる数字をベースに業績予測数字を作ればいいのですが、大企業の経営者はそれでは我慢できないようです。せっかく注文が来ているのだから何としてでも作れ、と工場や下請会社に厳命する経営者もたくさんいます。とくに大手の自動車や機械メーカは、下請電子制御基板メーカに電子部品手配を任せてきたところも多く、経営者が現在の電子部品手配の難しさを甘く見ている節も感じられます。納期の直前になって部品が揃わないから生産できないと、他の構成部品の注文数を大幅に減らしてくる大手工場もいます。その原因のひとつに部品手配に関する大企業経営者の危機意識の低さにあるのではないでしょうか。

強気の工場が生産計画を達成させるためには部品の購買量を増やすことが必要です。すると取引現場には必要数以上の注文情報が飛び交うことになります。一般的に「仮需」と呼ばれる数字です。この仮需は部品取引だけではなく、部品の製造機械、さらには製品の先行手配といった形で関連製品全体の受注数量や内示数量を増幅させることになります。私の研修で紹介している「ブルウィップ効果」といわれる現象です。

今期の各社の好調な業績予想はこのブルウィップ効果増幅の影響をかなり含んでいるのではないかと思われます。現在は供給不足ということで注文が膨れ上がっていますが、需要が減少に転じた途端に新たな注文が急激に減少する可能性があります。

バブル経済やリーマンショックが破綻したときにも起きた現象です。

山が高ければ、その分谷も深くなるのがブルウィップ効果による波の特徴です。2022年度は山から谷に移る岐路に当たる年になるかもしれません。ブルウイップ効果は引合いや出荷の実績をグラフ化することである程度の傾向を掴むことができます。

営業部門が出してくる好調な業績予想に惑わされないように気を付けましょう。