日本の大企業との取引では、「内示」と呼ばれる事前発注予定情報の扱いに注意する必要があります。内示とは購入品の正式注文の前に提示される購入予定情報のことです。正式注文納期が1か月の企業が、3か月以上前から今後の購入予定情報を流してくるといった形で運用されます。納入業者は内示を見ることで事前材料手配や中期的な要員調整を行うことができますので、本来はとても有意義な情報提供になるはずでした。

ところが、内示を出しているからといって納入業者に無理な対応を強いる大企業がいます。 内示を流しているから正式注文は1週間前程度の短納期で発注してくる企業です。

さらに内示はあくまでも予定にすぎず約束したわけではないので、内示と正式注文が違っていても責任をとる必要はないと豪語する大企業もいます。これは本来の内示の運用とは違います。 納入業者の納期対応は楽になるどころか、内示に振り回されてかえって生産が混乱することもありえます。

「下請けいじめ」といわれても仕方がありません。

日本の多くの下請け企業は、親会社の内示変動に悩まされながらも献身的な努力によって納期遅れがないようにしてきました。自社の資金力を超える在庫を積み上げて対応してきた中小企業もいます。内示への対応ができずに欠品したら、今後取引してもらえないのではないかという不安を抱えているからです。

しかし、このことが発注側の甘えとおごりを誘発し、大企業の生産管理力を弱体化させました。

日本独特の内示調達ですが、コロナ禍や災害などに起因する全世界的な部品不足や材料不足の影響で見直しを余儀なくされています。すでに半導体部品は正式注文でない限り、注文を受け付けてもらえません。トヨタですらジャスト・イン・タイム生産の見直しを表明しました。

そもそもグローバルな取引現場では内示などというあいまいな情報での契約はありえません。

正式な注文を早く出した企業に優先的に商品が供給されるのが当たり前の商取引ルールだからです。日本の商取引もようやく本来の形になりつつあるといえます。

一方で今までのような下請け企業の献身努力に甘えた大企業の生産管理は機能しなくなります。

とくにERP(MRP)のような計画変動やオーダ変更に弱い生産管理システムを使っている工場は抜本的なシステム見直しが求められるようになるでしょう。旧来の製番管理や製造ロット番号管理のような変更対応に強い生産管理システムへの回帰が進むと思われます。

いずれにしろ少しでも納期遅れ対策に困ったら手遅れにならないうちに私のところに連絡してください。