大企業を中心に賃上げの動きが広がっています。

物価高騰対策としての賃上げが主体ですが、このままうまくいくのでしょうか。

企業が賃上げすれば、当然のことながら企業利益は減ってしまいます。

行政は価格転嫁値上げでカバーするようにいっていますが、今の社会情勢からみてそんなにうまくいくでしょうか。

価格転嫁が進みにくい原因のひとつに、日本の消費者に広く浸透している「いいものを安く買うことが美徳」という節約志向があります。

高いものを無理して買うことに抵抗を覚える消費者も多く、大幅に値上げすることで生活必需品以外は販売量が減ってしまうことも予想されます。

たとえ一時的に価格転嫁値上げしたとしても、すぐに値下げを余儀なくされる可能性もあります。

部品会社にとっては、「いいものを安く」問題に加えて、大企業の購買部門に浸透している「購買コストダウンノルマ」も重石になっています。

経営者からコストダウンノルマを課されている購買部門は、部品会社に対してコストダウンを強く要求しがちです。

価格転嫁どころか、仕入先に対して毎年5%ダウンといった根拠の曖昧なノルマを課している大企業も相変わらずに残っています。

彼らが価格交渉で担ぐ理屈が、部品会社が現場改善活動をすればコストは安くなるというものです。

筆者の本を読んだ方であればこの考え方は誤りであることは自明だと思いますが、本気でそう信じている購買関係者も多くいます。

彼らに対して賃金上昇分の価格転嫁交渉をすると、値上げするなら安い業者や海外生産に取引を移すと脅されることさえありえます。

値上げができないのであればどうすればいいかというと生産平準化によって、当該企業の生産性(一人当たりスループット)を高めるのが有効です。

生産量(売上)を増やして生産性を高めるアプローチもありますが、世界的な金融破綻による景気後退が心配されますので、安易な期待は禁物です。すでに日本の製造業界でも生産が落ち込みだした企業もでてきています。

生産平準化の話は気づいていない工場関係者も多いようですが、発注量が増やせないのであれば平準化を求めることが重要です。

ただし平準化は生産管理能力が機能していないと実現できません。高額投資をして導入した生産管理システムが伝票発行機状態にとどまっていたり、EXCEL頼りの工場では期待薄です。

生産平準化や生産管理能力に取り組みたい工場は相談に応じますので早めに連絡してください。