インダストリー(産業革命)4.0というドイツ生まれのコンセプトが注目を集めています。

それに影響されて日本でも工場内や離れた工場にある製造設備などをインターネットなどで結ぶ(IoT)で、フレキシブルかつ効率的な生産活動を実現していこうとする動きに期待する声があります。

工場設備をネットワークでつなぐという仕組みは、30年くらい前に一世を風靡したFMS(Flexible Manufacturing System)と似ています。FMSは工場内にある工作機械、ロボット、無人搬送機(AGV)、自動倉庫などをネットワークで結んでフレキシブルな自動化工場を実現するというものでした。工場に行くと現在も現役で動いているFMSラインも多く残っています。

FMSは自動化によって生産効率が高まるとかフレキシブルな運営ができるといったメリットが喧伝されることが多いですが、営業段階であまりフレキシブル生産をうたいすぎると投資した設備費用を回収するための生産量を安定的に確保できなくなる可能性があります、

中にはFMSを入れたはいいが、かえって稼働率が落ちてしまい、利益が落ち込んだ工場もありました。また予想以上の生産変動が起きたことで、製造できずにかえって工場現場が混乱する可能性もあります。スケジューラやAIを入れれば解決できるといった夢物語をするベンダもいますが、そんなことはありえません。フレキシブルに生産できるのはあくまで個別調整段階での話です。上位の生産計画が安定していなければ利益は得られません。理想はトヨタが目指している平準化生産の徹底がキーになります。

上記の問題を解決しようとすると、ネックとなる工程間に緩衝在庫を置いて調整する必要がでてきます。MRP生産が徹底されている欧米企業はこの緩衝在庫を積極的に活用します。ところが、誤ったトヨタ生産認識の影響で「在庫は悪」意識に取りつかれた日本の工場では緩衝在庫なしで工場運営をしようとする傾向があります。この状態だとIoTで効率的に生産しようとしても欠品で製造できないといったことが起きることがあります。

IoTは決して万能な仕組みではありません。製造業者がIoTを取り入れるにあたっては儲かる工場とはどういう工場なのかを理論武装してから導入することをお勧めします。

拙著「誰も教えてくれない「工場の損益管理」の疑問」をぜひお読みください。

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