「賀茂川の水、山法師、賽の目」。これは平安朝の白河法皇(大河ドラマでは伊東四朗さんが演じました)が自分の意のままにならないものとしてあげたもので「天下三大不如意」と呼ばれます。

これらを企業経営における欠品対策にあてはめると賀茂川が災害、山法師が納入業者の納期遅れ、賽の目が需要変動でしょうか。

白河法王には三大不如意に対する打つ手がありませんでしたが(?)、企業の欠品対策には有効な対策があります。それが「安全在庫の活用」です。

もっとも一般的な安全在庫が需要変動による欠品を防ぐための安全在庫です。安全在庫計算式(統計計算による安全在庫計算))に基づいて在庫量を計算して事前に用意しておきます。

最近はブルウィップ効果といわれる需要変動の激しい増幅によって安全在庫量が膨れ上がりやすいという課題が問題になていますが、安全在庫といえばこの需要変動対応安全在庫をイメージする方も多いと思います。

地震、台風、火事、感染症といった災害による欠品リスク対策として求められている安全在庫が生産変動対応安全在庫です。災害はいつ起きるかわからないので安全在庫計算式は使えません。通常は何日分といった形で、BCP(事業継続対策)方針に基づいて決めます。生産変動対応安全在庫は今回のコロナ禍で注目を集めるようになりました。在庫レスで有名なトヨタでもあわてて安全在庫を積み上げています。

納入業者の納期遅れ対策のための安全在庫は今までの日本企業では軽視されてきました。トヨタのJIT(ジャストインタイム)生産に対する誤解のせいで、下請業者の納期遅れなど許さないといった高圧的態度で接してきた大企業の購買部門もありました。

ところが、部品会社や自社の部品工場の製造現場の人手不足が加速する中で、部品の欠品が相次ぐようになってきました。代表が世界的に不足している半導体です。今後は安全在庫を積み上げるだけでなく、部材の調達先を含むサプライチェーン全体を通じた製造品の進捗管理も重要になってくるでしょう。トヨタも部品サプライチェーン上の取引部品会社の生産進捗の把握強化に乗り出しました。

ところで、ERPパッケージ、とくにSAPの生産管理モジュールは工程管理ロジックに課題があるため、生産進捗の管理を苦手としています。トップダウンや流行に乗せられて、十分な機能検討をせずにERPを導入した企業、とくに大企業の工場から生産が遅れて困っていると泣きつかれるケースが増えています。

もしも皆様の工場でERP、とくにSAPで困っているようであれば、採算度外視で解決策を伝授しますので手遅れになる前に連絡ください。SAPは先端システムではありません。

SAPのロジック自体はレガシー(時代遅れな)システムです。政府が作ったDXレポートの冒頭でもレガシーシステムの代表としてSAP問題が指摘されていますが、SAPの貧弱な生産管理機能だけでは日本工場の高度なものづくりに対する十分なサポートはできません。SAPの導入に際してはベンダに騙されないように注意しましょう。