東芝の経営危機をひきおこしたのれん代に関して説明します。のれん代は聞きなれないことばですが、東芝のように一気に減益になる可能性がありますので、注意しましょう。
のれん代とのれん代の償却
M&Aにつきまとうのが「のれん代」です。「のれん代」とは買収先企業の時価資産評価と買収価格の差額のことです。その企業のブランド、収益力、営業力、営業権、商圏、技術力などに対する追加の価値評価に当たります。日本の会計基準ではのれん代は20年以内で償却することができます。
国際会計基準ではのれん代の償却は認めておらず、損失が明確になった時点で償却します。これは上場企業経営者にとってはメリットがあります。すぐに償却しないので、すでに大きな利益をあげている企業を買収した場合は、簡単に自社の利益を嵩上げすることができます。短期利益を上げたい経営者にとっては魅力的な利益創出法です。大手企業経営者が減価償却のつきまとう設備投資よりもM&A投資を重視するのはこのためです。しかもこうした大手企業経営者の経営姿勢が、日本工場のものづくり技術力の低下を生み出す原因になっている面もあります。日本の工場が直面している敵はライバル会社だけではありません。経営者に蔓延するM&Aへの魅惑にも注意する必要があります。
ただし、もしも儲かると思っていた事業が儲からないと分かった場合は一気に減損処理しなければなりません。