皆さんは工場の製造リードタイム(工場に製造開始を指示してから出来上がるまでの期間)はどうすれば短くなると思われますか。

大抵の人は製造現場の製造作業を効率化して製造時間を短縮すればいいと考えます。しかし、この考え方は適切なアプローチとは言えません。一般的な工場では、人や機械が実際に製造している時間は製造リードタイム全体の20%程度しかありません。残りの時間は製造工程(製造設備)が空くのを待っていたり、製造工程に製品が届くのを待っていたりする待ち時間です。いくら現場が努力して製造時間を短くしても製造リードタイムはそれほど短くなりません。

製造時間よりも工程間の待ち時間を減らした方が劇的なリードタイム短縮が実現できます。

ところがこのことを理解して改善活動をしている工場は思いのほか少ないです。やたらと製造時間短縮にこだわっている工場はよくありますが、工程間待ち時間を分析して改善活動に活用している工場は限られます。

私のコンサルや生産管理研修では、工程間の待ち時間を分析することで、その工場の管理レベルの巧拙が判断できると話しています。 以下は実際に私がコンサルに入った工場で、工程間待ち時間が大きかったり、バラついている原因を調査した結果です。

・実績データの入力漏れやミスが放置されていた
・別のオーダ番号の伝票を先に処理していた
・納期に余裕のある製造指示書が放置され忘れられていた
・現場が製造指示を無視して勝手に製造順を変更していた
・特急品優先が増えすぎて、通常品が後回しになっていた
・不良品、製造停止品などの廃番処理が適切に行われていなかった
・納期遅れ対策のための先行投入品が途中で滞留していた
・内示と確定の差が大きく先行手配した内示品が滞留していた
・特定工程の能力が不足していたが、放置されていた
・複数工程の同期対策が不十分であった
・補充生産手配がうまく機能せず、欠品が多発していた
・外注会社や部品会社の納期遅れが急に増えた

皆さんの関係先の工場でも工程待ち時間が長くなっている原因を調査してみてください。待ち時間が長いのは管理レベルの低い中小企業の話と思われるかもしれませんが、いずれも上場企業の工場の例です。こうした現場問題が放置されている工場がいくらIT活用に力を入れても計画(生産指示)通りに生産される可能性は低いです。

最近日本のものづくりが危機状態にあるという話がよく出てくるようになりました。その解決策としてDX化によるスマート工場などという話も飛び交いますが、それは早計です。日本の製造現場が抱えている課題は高度な格好いい話ばかりではありません。もっと泥臭い問題が中心です。

待ち時間分析したことがない工場はすぐにでも分析してみてください。工場現場の真の姿が浮かび上がってくると思います。